私たちの腸内フローラには、なんと約3万種類100兆個、重さにして1~1.5kgになる腸内細菌が生息していることがわかっています。
腸内細菌は、その働きによって「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」と大きく3つに分類されていますが、それぞれのグループには具体的にどのような菌が生息しているのでしょうか。
まずは腸内細菌を構成する菌グループには、具体的にどのような菌がいるのか、調べていきましょう。

腸

身体に良い働きをする「善玉菌」

乳酸菌(乳酸桿菌)

主な生息地は小腸です。

ラクトバチルス菌

植物性の乳酸菌で、味噌や醤油など発酵食品に含まれており、身近な食材から摂取できます。市販のヨーグルトや乳酸菌飲料にもよく使われている菌です。

ラクトバチルス菌
By Photo Credit: Janice Haney CarrContent Providers(s): CDC/ Pete Wardell [Public domain], via Wikimedia Commons

フェリカス菌

ヨーグルトやチーズ、バターに多く含まれています。
加熱殺菌した状態の乳酸菌(死菌)で、ビフィズス菌など棒状の形をした乳酸菌と比べると、フェカリス菌は「球菌」と呼ばれる菌体で一度にたくさん摂ることに適した形をしています。死滅した乳酸菌の摂取も大変有効であることが分かってます。

フェリカス菌
By Photo Credit: Janice Haney CarrContent Providers(s): CDC/ Pete Wardell [Public domain], via Wikimedia Commons

クレモリス菌

カスピ海ヨーグルトの種菌に使われています。
生きて人間の腸内に届き、カスピ海ヨーグルト特有の粘りを生み出す菌体外多糖(EPS:Exopolysaccharide)を産生している。摂取量が多いほど発熱や喉の痛みなどの風邪の症状が軽くなることが報告されており、動物試験によりインフルエンザウイルス感染後の重症化が抑制されることも報告されています。

ビフィズス菌

主な生息地は大腸です。

ビフィダム菌

生後5日目程度の乳児の腸内に存在するようになり、母乳やミルクに含まれる乳糖をエサにして増えて行きます。食中毒に原因になる病原性細菌を定着させることを防いだり、ビタミンB群の生成やコレステロールを吸収する働きが認められています。

ビフィダム菌
By Y tambe (Y tambe's file) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/) or CC BY-SA 2.5-2.0-1.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5-2.0-1.0)], via Wikimedia Commons

ロングム菌

ヨーグルトや乳酸飲料などビフィズス菌を使った製品の多くはこのロングム種を使っています。生きて大腸まで届き、善玉菌の増殖を活性化し悪玉菌を減らす作用があります。


身体に悪い働きをする「悪玉菌」

ウェルシュ菌

哺乳類の腸内や自然界の土壌、水中などに生息する微生物です。芽胞による耐熱性が特徴で、高温の環境でも死滅しない特徴があります。たんぱく質などを原料に有害物質を生成します。

ウェルシュ菌
By Content Providers(s): CDC/Don Stalons [Public domain], via Wikimedia Commons

ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌ともよばれており、皮膚や粘膜にも存在しています。繁殖すると食中毒の原因になります。

ブドウ球菌
By Photo Credit: Janice CarrContent Providers(s): CDC/ Matthew J. Arduino, DRPH; Janice Carr [Public domain], via Wikimedia Commons

ピロリ菌

ピロリ菌は哺乳類の胃の粘膜に生息する微生物です。粘膜にもぐり込むことが可能な上、酵素を出してアンモニアを作り、自らの周囲をアルカリ性に保ち、酸性の胃の中で生息することができています。衛生環境が不十分な戦後に生まれた団塊世代の腸に多く生息すると報告されています。一度ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜上で増殖し続け、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんを引き起こすこともあります。

ピロリ菌
By Yutaka Tsutsumi, M.D.Professor Department of PathologyFujita Health University School of Medicine [Copyrighted free use], via Wikimedia Commons

どちらにも属さず強い方に味方する「日和見菌」

バクテロイデス

日和見菌の代表ともいわれる菌で腸内に多く生息します。正常な状態だと無害な上、感染予防に努めている菌ですが、悪玉に偏ると大腸菌と同じ働きをし始めます。

バクテロイデス
See page for author [Public domain], via Wikimedia Commons

大腸菌

哺乳類に生息する微生物です。増えすぎない限りは害がありませんが、加齢や偏った食生活などの影響を受け、腸内で数を増やしていきます。増えすぎると、腸内の食べかすを腐敗させ下痢や便秘をおこしたり、免疫力を弱めたりします。

大腸菌
By Credit: Rocky Mountain Laboratories, NIAID, NIH [Public domain], via Wikimedia Commons


以上はあくまで「腸内細菌」の代表選手です。
なじみある名前の菌やあまり知られていない菌など、様々な種類があることが分かります。

次の記事では善玉菌が増えると一体どのような効果があるのか?という点について記事を書きたいと思います。

この記事のまとめ

腸内細菌の各分類の内訳は以下のように構成されている。

  • 善玉菌
    乳酸菌(ラクトバチルス菌・フェリカス菌・クレモリス菌等)、ビフィズス菌(ビフィダム菌・ロングム菌等)
  • 悪玉菌
    ウェルシュ菌、ブドウ球菌、ピロリ菌、等
  • 日和見菌
    バクテロイデス、大腸菌、等