「腸」と「血管」

 健康にもトレンドというものがある。最近だと、とかく「腸内環境をよくすれば、健康的に、心穏やかに生きられる」とされ、女性向け雑誌などでは、「美腸エクササイズ」なるものも紹介されている。しかし、「腸を健康にしたいなら、血管を健康にする必要がある」と断言するのが、本書の著書で“血管先生”と呼ばれる医学博士・池谷敏郎氏だ。

 池谷氏によると、腸が消化した栄養は毛細血管やリンパ管を通じて全身に届けられるため、腸と血管は決して切り離せないものなのだそう。したがって、2つの「クダ」双方のコンディションを整えなければならない、というのが池谷氏の意見だ。

 まず、腸の健康の鍵を握っているのが「腸内フローラ」。腸の中には善玉菌、悪玉菌、日和見菌などの腸内細菌が100~1000兆個も暮らしており、その様子が群生している植物に似ているため「腸内フローラ(花畑)」といわれている。腸内フローラは太りやすさなどの体質から持ち主の性格まで左右していて、たとえ双子でも食習慣が異なれば腸内フローラも全く異なるそうだ。

 「腸をよくする食習慣」といえば、真っ先に思い浮かぶのは乳酸菌やビフィズス菌ではないだろうか。しかし、残念ながら取り入れた善玉菌は腸内で定着することはない。それでも、意味がないわけではない。善玉菌を増やす方向で働きかけてくれるのだ。善玉菌が育つ環境が整うように、食生活を変えていくべきだということを、改めて認識できたのはありがたい。

 一方、血管を健やかに保つための秘けつのひとつは、精神的なストレスを減らすこと。とりわけ「怒り」は血管を傷つけてしまうので、「怒ると血管が傷つけられてしまう」という意識を持って、心を落ち着かせることが重要だという。

 他にも、本書ではチーズや玉ねぎ、アボカドとオクラなど、腸と血管のどちらも若返らせる食材や食べ方についても懇切丁寧に指南されている。今まで腸も血管も気にしたことがなかったという方、あるいはどちらか一方しかケアしていなかったという方は、ぜひ試していただきたい。

出版社:青春出版社
書名:老けない血管になる腸内フローラの育て方
著者名:池谷敏郎
定価(税込):1,080円
税別価格:1,000円


西日本新聞 読書案内編集部


via:西日本新聞