ファストフード

減ってしまった腸内細菌群…食事を変えても回復は難しい様子

マウス実験で、我々が何世代にもわたって摂取している西洋式食事の食物繊維の少なさが、腸内細菌群の多様性を狭め続け、それを回復するのは簡単ではないことが明らかに…。

低MAC値の食事スタイルを続けてきた現代人

数世代にわたる腸内細菌群への損傷は、食事内容を変えるなどのシンプルな方法ではなかなか回復が難しいことが、最近の研究結果で明らかになりました。

MAC(Microbiota-accessible carbohydrates)は、腸内細菌体系を形成するのに重要な働きを担う指標です。
MACは代謝によって消化されにくい炭水化物で、腸内細菌に働きかけることができます。

特定の食物や炭水化物が、腸内細菌類の多様性に貢献することができる程度の代謝形態を指す指標ということです。
研究の結果、このMAC値は、飽和脂肪酸や精製された炭水化物が多めで食物繊維が極端に少ない西洋式食事スタイル(つまり、ファーストフードや加工食品など)を続けていると、他のあらゆる地域の伝統的食事スタイルと比較して極端に減少することがわかりました。

マウスでの実験内容

スタンフォード大、ハーバード大、プリンストン大の共同研究で、10匹のマウスにMAC値が豊富に含まれる植物由来の繊維質の食事を6週間与えた後、マウスを2つのグループに分けました。

1つ目のグループは、その後MAC値が少ない食事を7週間与えられた後、再度MAC値が豊富な食事に切り替え6週間与え続けます。
いっぽう2つ目のグループには、一貫してMAC値が高い食事を与え続けました。

実験の初期段階においては、2グループのマウスはともに微生物の構成要素がはっきりと判別出来ました。
その後、食事の内容を変えられた前者のグループのマウスは、後者と比較すると構成要素がはっきりと変化を示し始め、食事をMAC値が豊富なものに戻した後でも状況は変わりませんでした

OTU値の変化を見ると

食事内容の変化で特定の細菌が失われたかどうかを調べるため、それぞれのグループで特定の細菌類の優勢や劣勢を示す指標であるOTU(operational taxonomic unit)を調べました。

OTUについて簡単に説明すると、細菌の必須遺伝子の塩基配列をコンピュータで類似度を指標に分類したときに得られるユニットのことです。

タンパク質の設計情報はDNAに存在しますが、DNAからタンパク質を合成することはできません。
DNA上の情報はRNAに転写されリボソームによって翻訳された結果、アミノ酸が合成されたタンパク質を合成します。

リボソームを構成しているRNAは大きさによって23S、16S、5Sに分類されますが、細菌類の必須遺伝子は一般に16Sで、細菌類からの16S遺伝子配列データを解析していくと、ある一定レベル以上の類似性を持つユニット(OTU)が識別でき、それらのユニットは進化的に同一の菌類の集まりであることがわかるという仕組みです。

 

その結果、食事を変えられたグループからは208のOTUが、また、そのままの食事を続けたグループからは213が識別されました。

 

MAC値の高い食事から、低い食事に切り替えられた過程では、208のうち104、細菌群の量が60%減りました

そのままの食事を続けたグループでは、213のうち25にあたる11%の減少に止まりましたので、食事を変えたグループはかなりの量の細菌を失ったことになります。

高MAC値の食事に切り替えた時点では、208のうち71、33%が減少しましたが、そのままの食事を続けたグループでは特段の変化は確認できませんでした。研究チームは実験では2つの質的に異なる細菌の存在が確認された。208のうち59は食事内容の変化で数が減ったが、MAC値を上げてやれば再び値が上がったので、こちらの細菌であれば、短期間で数は回復できると思う」としています。

おそらく、回復不可能なタイプの細菌類と、そうでない細菌類があるということでしょう。

加工食品は腸内細菌の多様性を奪う

チームは、過去数百年にわたって農業改革や加工食品の大量消費などが、結果的にヒトの腸内細菌数の調整に繋がった、と指摘。

 

この研究結果は、ヒトの生活スタイルの変化ー大昔の狩猟採集生活から、産業革命後の現代的な生活に切り替わったことが、ヒトの腸内細菌群に変化をもたらしたことを示すものではない。
言えるのは、近代から何世代もの間、我々が食物繊維に欠ける食事スタイルを続けてきたことが、腸内細菌群の多様性を奪ったことと、産業化された世界における細菌群の多様性は低くなっているということである。

 

この研究は、西洋式食事法が細菌群に与えるさらなる悪影響を明らかにするヒントになると考えている。

研究チーム

コンビニ弁当は、腸内細菌群の多様性を減らす代表的な低MAC食品ですので、食べ続けていると腸内細菌の多様性に確実に影響を与えることでしょう。

【参照】

via:imedi